
食品や製品の原材料表示は健康と安全に直接影響を与える重要な情報源です。
ところが、世界中で原材料表示のルールが統一されていないことをご存知でしょうか?
安全な食品を選ぶために、原材料表示を参考にしている人も多いでしょう。
今回は、世界中で食品表示のルールが統一されていないことの現状や安全な食品を選ぶための対処法について解説します。
原材料表示とは?その必要性も解説

原材料表示は安全な製品や食品を選ぶ際に参考になります。
原材料表示の問題について把握する前に、まずは原材料表示について理解を深めておきましょう。
原材料表示とは何か
原材料表示とは、商品一つひとつがどのようなものであるかを具体的に証明するIDのようなものです。
消費者が商品について必要な情報を得たうえで、商品を選択したり、安全に正しく摂取したりするために、重要な役割を果たしています。
原材料表示の必要性が高まった背景
原材料表示への関心が高まったのは、2000年代に不当表示や異物混入といったさまざまな問題が頻発したことが理由です。
食の安全性に対する消費者の要求が厳しくなったことで、原材料表示の品質と内容の証明に厳正さが求められるようになりました。
今後の原材料表示に求められること
原材料を正しく表示するだけでなく、食品の移動履歴を把握できる仕組み(トレーサビリティシステム)の構築がが求められています。
食品事故が発生した場合、いつ、どこで生産されたのかを把握できれば、原因の究明と商品回収など迅速な対応が可能になるからです。
世界標準とは?その目的と役割

世界標準とは、国際的な合意に基づいて設定される規則やガイドラインのことを指します。
食品産業における世界標準は、国際食品規格委員会(Codex Alimentarius Commission)などが策定しています。
コーデックスとは?
国連機関であるFAO(国連食糧農業機関)とWHO(世界保健機関)が合同で設立した国際食品規格委員会、通称コーデックス委員会が策定した規格です。
食品規格を意味するラテン語であり、コーデックス規格とも呼ばれています。
コーデックスの歴史は非常に古く、13世紀から15世紀が起源だと言われています。
現在のコーデックス委員会が設立されたのは1963年です。
設立以来、コーデックス委員会は、衛生管理のガイドラインを基にして、さまざまな規格を策定しています。
コーデックスの主な活動目的
コーデックスの主な活動目的は、消費者の健康保護と食品取引における公正性の確保です。
消費者の健康保護とは、食の安全性を追求することを意味しています。
また、食品取引における公正性の確保とは、公正な貿易の実現を意味しています。
食の安全と公正な貿易は無関係のように思えるかもしれませんが、実は、各国で生産されている食品を世界全体で効率よく消費するためには、公正な自由貿易の実現が欠かせません。
コーデックス委員会は国連の一組織であることから、安全な食品を全世界の人々に行きわららせる使命を担っています。
そこで、食品取引の公正性を活動目的として挙げているのです。
コーデックスの役割
コーデックスの役割は、食の安全を守るために多種多様な食品規格を策定することです。
コーデックスが策定した規格の中には、個別食品の標準規格、各種ガイドライン、農薬の最大残留値といったようにいくつかの種類が存在します。
中でも、特定の食品に定義づける標準規格は、200以上の品目がありバラエティーに富んでいます。
原材料表示のルールの不統一性と問題点
食の安全性を確認するための原材料表示ですが、国によって表記ルールに違いがあります。
ここでは、国ごとの違いについて詳しく紹介します。
複合原材料の表示方法における各国の違い
アメリカやEU、日本とでは複数の原料からなる複合原材料の表示方法が異なります。
日本の場合
日本では、下記のように当該原材料の名称の次に括弧を付けて、それを構成する二次原材料をもっとも一般的な名称で表記するのが基本です。
例:マヨネーズ(食用植物油脂、卵黄(卵を含む)、醸造酢、香辛料、食塩、砂糖)
一方で、下記ケースでは二次原材料を分割して表示することも認められています。
例:「加糖卵黄(卵黄(卵を含む)、砂糖)」⇒「卵黄(卵を含む)、砂糖」との表示が可能
EUの場合
複合原材料全体の重量で表示され、二次原材料をすぐ後ろに続けて記載すれば、複合原材料としての表示は任意で可能とされています。
アメリカの場合
一般的な名称に続けて、括弧付きで最終製品における含有率の高い順番に二次原材料を表記する。
複合原材料名は表示せず、その各二次原材料の一般的な名称を最終製品における含有率の高い順番に表示する。といった認識が基本です。
原材料表示が不統一であることで起こる問題点
このように、国ごとに表示方法が異なることにより、輸入の際に問題が生じます。
海外から食品を輸入するとき、それぞれの国の原材料表示を日本の規定に合わせて変更する必要が生じます。
二次原材料の詳細確認に時間や手間がかかることもあり、表記ミスが起こり得るリスクも出てくるでしょう。
このようなことは消費者にとって混乱を招く可能性があり、食の安全性に悪影響が及ぶことが懸念されます。
原材料表示の不統一対策として何ができる?

原材料表示のルールが世界全体で不統一であることから、食の安全に悪影響を及ぼす可能性があります。
原材料表示のルールの不統一性に対処するために、以下のいくつかの対策が考えられます。
国際協力
国際食品規格委員会などの国際機関による協力を強化し、世界標準の策定を推進することです。
消費者教育
消費者に対して、原材料表示の重要性や注意すべきポイントについて教育を行うことで、消費者の食に対する意識を高めます。
透明性の向上
食品企業に対して、製品の成分情報をより透明に提供するよう奨励することにより、食品企業の意識改革を促します。
法律の見直し
各国の法律や規制を見直し、国際標準に合致するように修正を促すことで、原材料表示基準に統一性を持たせます。
原材料表示を理解し食の安全に活かそう

食品に付けられている原材料表示は、食の安全を確認するのに大切な役割を果たしています。
コーデックスのような国際規格はありますが、国ごとに原材料表示の基準が異なるのが現状です。
安心して食べられる食品を選ぶためにも、原材料表示の詳細や問題点について理解することが大切です。
また、基準が異なることで生じる問題の対策を理解し、食の安全性のために働きかけてみましょう。

