「最近お腹周りが出てきた」「健康診断で内臓脂肪の多さを指摘された」といった経験はありませんか。
臓器の周りに付く脂肪のことを内臓脂肪と呼びますが、特に注意したいのが脂肪肝。
脂肪肝とは肝臓周りではなく肝細胞に脂肪がたまることです。
肝臓は人間が生きていくために欠かせない重要な役割を果たしていますが、肝臓の健康を害している人が非常に多いのが現状です。
そこで、今回は肝臓のスペシャリストの医師、尾形哲さんが書いた「肝臓から脂肪を落とす食事術」という本を紹介します。健康維持の参考にしてみてください。
肝臓の主な働きを理解しよう

数ある臓器の中でも、なぜ脂肪肝の危険度が高いのか。
それは、肝臓が人間が健康で生きていくために欠かせない役割を果たしているからです。
肝臓の主な役割
- アルコールの分解
- 摂った栄養素を身体の各部位で働く形に変換
- 食事で摂取したブドウ糖をグリコーゲンや中性脂肪に変えて貯蓄。必要なときに再びブドウ糖に戻して放出
- 脂肪の消化吸収を助ける胆汁を作る
- 薬物や毒物などの有害物質を無害な形に解毒
- ウイルスや細菌病原菌が身体に回らないように働く
働き者の肝臓は全臓器の中で最も重くて大きく、大量のエネルギーを消費します。
肝臓の健康状態が悪い人が増えている理由とは
一昔前よりもお酒を飲む人が減っていると言われていますが、日本人の成人の3人に1人が肝臓の健康が損なわれているというデータがあるのです。
脂肪肝が危険なのは、肝臓の周りではなく肝細胞の中に直接脂肪がたまり、自覚症状がないままどんどん機能が低下していくからです。
機能が弱っても働き続ける肝臓に負担がかかり続けると、取り返しのつかないことになります。
肝臓の機能が著しく低下したときは、生体肝移植しか医療的処置の手段がありません。
そこで、日頃から肝臓の健康に気をつける必要があるのです。
しかし、なぜアルコールを飲まないのに肝臓の健康が蝕まれるのでしょうか。
その原因は食事です。
つまり、食事さえ変えれば肝臓の健康を取り戻せます。
肝臓の健康を回復するための方法を以下の3つの章に分けて詳しく解説します。
第1.脂肪肝はわずか3カ月で緩和

食事を変えれば脂肪肝はわずか3カ月で改善につながる、尾形哲さん肝臓のスペシャリストである著者と糖尿病専門医によって開発されたメソッドを紹介します。
そのメソッドのポイントは2つです。
ポイント1.驚きの効果
肝臓のスペシャリストである著者と糖尿病専門医によって開発されたメソッドは、脂肪肝で悩む外来患者の8割以上を3カ月で5kg減、脂肪肝を改善できたという報告もあります。
ポイント2.手軽で簡単に
大切なのは肝臓を労わることで、スーパーで買える肝臓を労わる食事を増やすだけです。
そして脂肪肝の改善により期待できるメリットは以下の4つです。
- 健康的になる
- 痩せられる
- 疲れにくくなる
- 病気になりにくくなる
第2.体にいいと思っていたものが実は肥満の原因だった
私たちが普段何気なく口にしているものが肝臓を痛めつけています。
さらに、身体にいいと思って口にしていたものも、実は肝臓に脂肪をためる原因だったのです。
肝臓を痛めつける食材3つ
- 糖質
- 加工食品
- サプリメント
糖質

脂肪肝と聞くと脂肪の摂りすぎが原因と思われがちですが、糖質の過剰摂取が原因。
肝臓にたまる脂肪のうち、食事からとった油由来が14%、糖質から肝臓で合成される脂肪26%。皮下脂肪と内臓脂肪から溶け出した脂60%と、脂肪よりも糖質由来の脂肪が多いことです。
糖質は私たちの活動に欠かせないエネルギー源。
糖質を過剰に摂取すると使わない糖質をもしものときのために蓄えておくので脂肪が増えます。
さらに、以下の3つの条件が揃うと脂肪肝になります。
- 運動をしない
- 空腹感がなくても食べる
- 多量の穀物を食べる
以下に糖質を制限するための対策を紹介します。
食べ物より飲み物に注意

アルコールは脂肪肝の絶対条件ではなく、過剰な栄養摂取だけで起こることをまずは理解しましょう。
特に食べ物よりも飲み物に含まれている糖分に注意が必要。
事実、脂肪肝には糖尿病予備軍が多いのです。
特に、身体に良いと言われている野菜ジュースや乳酸菌飲料、スポーツドリンクにも砂糖が大量に含まれた水です。
飲み物は水もしくは無糖のお茶が最適。
ノンカロリードリンクやノンシュガーは、人工甘味料が使われているので避けましょう。
有害というエビデンスはありませんが、甘いものは食欲を増進させる働きがあるので避けるのが無難です。
果物はそのまま食べる
スムージーにすると食物繊維が壊れるので、スムージーよりも食べ物として食後のデザートにしましょう。果物に含まれている食物繊維を一緒にとると糖の吸収を抑えてくれます。
同様の理由で野菜もそのまま食べるのがおすすめ。

主食は半分減らす
米、パン、パスタは精製糖質。
主食は半分。
おかずを増やした定食スタイルがおすすめ。
- ご飯半分 70g
- 食パン一枚60g(菓子パンNG)
- うどん半玉120g
- 乾麺35g
これで主食25gに相当します。
毎回計算するのは難しいので主食の量を半分にしましょう。

野菜を多めにとる
一日350g(食物繊維1日20g)を目標に野菜を食べることです。
食物繊維を多く含んでいるわかめやきのこも含んでOK。
お菓子や甘いものを取らない
お菓子や甘いものは身近なところに置かない、家族や友人に報告するなど食べたことを認識して極力減らす努力が必要。
加工食品

ハムなどに含まれる果糖ブドウ糖液糖という糖質が、肝臓にダメージを与えます。
この果糖ブドウ糖液糖は、ありとあらゆる加工食品、調味料に使われています。
消化吸収のスピードがゆっくりであればそれほど害はないのですが、多量にとると果糖のまま直接肝臓に届くので要注意。
しかし、幅広い食品に使われているので完全に排除は困難です。
そこで、以下の3つの食品は徹底して食べないことです。
- 甘い飲み物
- スナック菓子
- カップ麺

サプリメント

健康や美容のために、サプリメントを飲んでいる人は多いでしょう。
しかし、サプリや薬も肝臓で分解されるので、その量や種類が増えると肝臓を痛めるリスクがあるのです。サプリに含まれる添加物の解毒時に肝臓に負担がかかるので、サプリを一旦やめて肝臓を休ませ、必要以上に肝臓を頑張らせないことです。
そして、アルコールの摂取も肝臓を痛めます。
特にアルコールと糖質の同時摂取はダメージが大きいので控えてください。
3.肝臓をいたわる極意5か条
次に肝臓をいたわるための極意5か条を覚えておきましょう。
- 体重を一日一回測って記録 食事内容を記録
- 甘い飲み物を飲まない 水、お茶、ブラックコーヒーメイン
- 野菜を増やす ベジタブルファースト 血糖値急上昇を防ぐ
- 糖質を減らす 一日トータルで70~130g(一食40g)雑穀や玄米でも糖質の量は変わらないので食べすぎに注意。
- 加工食品を減らす
食生活を大きく変えるのは意外とストレスがかかるもの。
スーパーの総菜コーナーを頼るのなど、無理なく続けることが大切です。
代謝アップのための筋トレ

運動なしで減量すると脂肪と共に筋肉が減少するので、代謝を下げないためにも、食事を変えるのと同時に筋トレを取り入れることが重要。
身体全体が変化するのでリバウンド防止にもなりますよ。
筋肉をつくるためにはそのもとになるタンパク質が不可欠。
ダイエット中にしっかりタンパク質をとると、糖質がエネルギーとして使われやすくなります。
ただし、タンパク質の摂りすぎるは生活習慣病のリスクが上がるので毎食20~30gを目安にします。
安全なタンパク質
- 大豆
- 魚
- 鶏肉
- 赤身肉
肉や魚は100gで20gの摂取量に換算して計算します。
タンパク質7gを含む食材とその量
以下の食材から3つを選ぶと一食当たり必要なタンパク質を摂取できます。
- 豆腐1/3
- たまご1
- 無糖ヨーグルト150g
- 納豆1パック

肝臓の健康回復と減量成功のコツ
添加物が使われているものが多いプロテインに頼るのは、なるべく避けましょう。
糖質を減らし空腹を感じるなら、野菜とタンパク質を増やすのがポイント。
お腹が空いているときこそ脂肪が落ちている時間なので空腹を意識することも大切です。
空腹を我慢できないときは、ナッツは25g(てのひらに軽くのる程度)ゆで卵1個を食べるのがおすすめです。
脂肪肝は食事で改善!

お酒を飲む習慣がなくても進行する可能性が高い脂肪肝。
自覚症状がないまま肝不全になるリスクがあります。
脂肪肝は食事から改善できます。
控えたほうがいい食材や食べ方、注意点を理解し、食事術で脂肪肝を改善させましょう。
参考文献 尾形 哲「専門医が教える 肝臓から脂肪を落とす食事術」KADOKAWA
